「今回の鉄句」アーカイブ

トップページの「今回の鉄句」に掲載した俳句のアーカイブ&簡単な解説です. 俳句としての「出来」については・・・あまり気にしないことにしています.

「鉄句(てっく)」とは,鉄道に題材を求めた俳句のことです(ギヤジローの造語). なにせ17文字の中に,季語と鉄道用語(あるいは鉄道を連想させる語)を入れないといけないので意外と大変です.

2008年

03/02   白妙の  比叡のふもと  トコトコと

京都の今年の冬は雪がよく降りました.雪で真っ白になった比叡山のふもとを走る叡山電車のイメージです.

2007年

08/12   轍の音が  あの日と同じ  敗戦日

8/15,それは多くの日本人にとって特別な意味のある日だろうと思う.1945年8月15日,大日本帝国政府はポツダム宣言受諾を国民向けに発表した(たしか連合国側に受諾を伝えたのは前日).作家の宮脇俊三氏は玉音放送を米坂線今泉駅前で聞いたそうだ.そのとき,いつもとかわらず運行されている鉄道とそれを成し遂げている鉄道員を見て「彼ら(鉄道員)は一体どういう精神をしているのだ?こんなときなのに」と思った,というようなことを何かで読んだ記憶がある.そう,日本の鉄道はたとえ戦争中であろうと無かろうとその開闢から全面運休した日は一日としてない.今日,今,我々が聞く車輪が鉄路を踏みしめる音というのは,まさしく敗戦のその日と同じ音である.いつも変わらない鉄道の存在とこの62年間守られてきた平和の尊さを思ってここに記す.

2006年

11/19   紅葉の  トンネルくぐりし  鞍馬行き

10/18付け朝日新聞の夕刊(だったと思う)の表紙に叡山電鉄鞍馬線の「もみじのトンネル」のライトアップが載っていました.そんなきれいな情景を詠んでみました.

10/20   虫の音も  はなむけたるか  古豪ゆく

昨年(2005年)の10/19,阪急の2301Fが桂から正雀に廃車回送されました.2301Fは製造から1960年製造の古豪でした.途中の長岡天神では快速特急の通過まちで数分の停車となったようです.その長岡天神は周りにまだ水田も残り,夜には虫の音も結構聞こえます.そんな虫の音の中を廃車回送される2301Fを題材に詠んでみました.なお「ゆく」は「行く」と「逝く」の掛詞です.

10/7   名月や  虚空に響く  轍の音

中秋の名月の時期となりました.名月の出ている静かな夜に夜汽車の轍を踏む音が響いているきれいな情景を詠んでみました.

10/1   秋ハイク  阪神阪急  合併日

ついに阪急と阪神の合併日となった10月1日,阪神・阪急共催ハイキングなどイベントがありました. 長年のライバルが合併で一緒になって,これからばら色の未来だといいんですが・・・結局,ダイムラークライスラーみたいに うまくいかないとホントにつぶれかねないしなぁ・・・.それにしても名詞を17文字並べただけのこの俳句,すごいなぁ・・.

9/28   秋風を  受くる鎧は  銀光

そろそろ気温も下がってきて,車内のクーラーを切って,窓を開けて走っている電車も増えてきました. 阪急の場合,非冷房の時代に窓を開けた時に日よけを使っても車内に風を入れるため,日よけは鎧戸でした (最近導入した車両や更新車では,クーラー設置を前提にフリーストップカーテンが採用されています). この時期になって冷房を切ると,この鎧戸が力を発揮して,窓を開け,日よけを閉めても車内に風が入ってきます. そんな鎧戸はアルミ製(正確にはアルマイト?)で,光を受けると鈍い銀色に光ります. そんな鎧戸を採用した先人の知恵に敬意を表して詠んでみました.

9/25   轟音と  風に揺れたる  曼珠沙華

お彼岸の中日も過ぎました.そろそろ曼珠沙華(彼岸花)の季節です. 彼岸花は田んぼのあぜなどに良く生えていて,線路脇に生えていることも良くあります. そんな線路際に生えている彼岸花のすぐ横を電車が轟音を轟かせて駆け抜ける,そしてその風で彼岸花が揺れている, そんな情景を詠んでみました.

9/21   秋の蝶(てふ) ホームの花に とまりけり

ホームで撮影していると,意外と多くの蝶に出会います. ただ,動きが速いので,飛んでいるところをまともに写真に収めるのは非常に困難です. そんな蝶が駅のホームにある鉢植えの花に停まっている,そういう情景です.

9/18   台風に  足止めくらふ  特急車

秋になって台風も近づいてきました.台風が直撃しそうなとき,阪急京都線では特急が運休になることがあります. そういう情景です.もっとも,利用者も事業者もこういったことで迷惑を被ることは言うまでもありません.

9/13   秋雨に  ヘッドライトが  映りこむ

9月も中頃ですが,なにやら秋雨前線が居座って雨の日が続きますね. 昼間でも少し薄暗い雨の日には電車はヘッドライトをつけて走行しながらホームに入ってきます. そのライトの光が雨に反射して雨粒が見えている,そういう情景です.

9/10   落とし水  のぼるは穂の色  てつの色

「落とし水」とは田んぼで穂が伸びる時,田の水を抜くことを言います.秋の季語です. 「落とす」ですから,対義語は「のぼる」ですね.のぼると言えば,穂が伸びるのもこの頃ですが, 田の横を通る電車も線路を「上って」行きます.そんな少し田舎チックな光景を詠んでみました.


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